薬剤師
公開日
2021.10.26

薬剤師

薬剤師は医師の処方箋に基づいて薬を調剤する「薬のスペシャリスト」です。薬の調剤ができる唯一の国家資格であり、私たちの生活においても医療現場においても欠かせない役割を担っています。

薬剤師の活躍場所は、薬局、病院、診療所はもちろん、薬の研究や開発を行う製薬会社などさまざま。薬の調剤、管理、販売から、服薬説明や相談まで医薬品全般にまつわる幅広い対応が求められる職種です。

長寿化、少子高齢化時代を迎え、患者が増え続ける一方で、医療現場では常に人手が不足しているといった問題があります。薬の研究や開発は、私たちの未来を背負っていると言っても過言ではないくらい重要です。

薬と患者を直接つなぐ薬剤師は、人々の命や生活を守るために不可欠な存在。薬剤師は、今後ますます必要とされる職業と言えるでしょう。

評価・満足度

総合評価 3.0
平均年収
565万円
最高年収
1,000万円
やりがい
3.0
給与・年収
3.0
専門性
3.0
将来性
3.0
休日・待遇
3.0

薬剤師の主な仕事内容

薬剤師は人々の命や生活を守り支える仕事。実際にどのような仕事をしているのでしょうか?

疑義照会

処方箋を受け取ったらまず、ミスや疑問点はないか確認をします。患者にアレルギーはないか、薬の飲み合わせに問題はないかなどの確認は薬剤師にしかできない仕事。

妊娠中、授乳中であれば飲める薬が限られていたり、小さな子どもであれば、体重によって薬の服用量が変わります。薬剤師が気づかずに薬を調合してしまえば患者はそのまま服用するでしょう。

薬剤師は医師の指示なく薬を変更できないため、疑問がある場合は医師に確認する必要があるのです。

調剤

薬剤師の仕事として広く知られているのが、薬局や病院での調剤の仕事。医師の処方箋に基づいて患者一人ひとりに薬を調合します。

薬の調剤は、患者の健康や命に直結するため間違いが許されません。医師の処方箋通りに正確に薬を調合し、患者に渡します。

服薬指導・相談

医師が処方した薬について、効能や飲み方、注意点を伝えるのも薬剤師の大切な仕事。

また、薬剤師が説明をするだけではなく、患者が不安や疑問に思っていることはないか聞き出したり、服薬の仕方や生活におけるアドバイスも行います。

薬剤師は黙々と細かい作業をするイメージがありますが、患者との対話、コミュニケーションも重要なのです。

医薬品の販売

医薬品の管理・販売も薬剤師の仕事。処方箋がなくても購入できる市販薬でも、第1類医薬品に分類される薬を販売するには薬剤師の資格が必要です。

薬局やドラッグストアにて、症状にあった医薬品の説明やアドバイス、場合によっては専門医の診察を勧めることもあります。

薬剤の研究・開発

新薬の研究や開発をするのも薬剤師の仕事。治療薬の開発や安全性、有効性の確認、臨床試験などを行うため、薬剤師の中でも高い専門性が求められる仕事でしょう。

病院やクリニックを訪問して、自社で開発した医薬品をプロモーションしたり新薬の情報を提供したりするMRと呼ばれる仕事をする薬剤師もいます。

MRには必ずしも薬剤師の資格は必要ありませんが、持っていることで活躍の場は広がるでしょう。

薬剤師の年収

薬剤師の年収は、日本の労働者の平均年収と比較すると高いと言えます。その理由として薬剤師は、難易度の高い国家資格に合格する必要があり、仕事内容も専門性が高いことが挙げられます。

人の命にも関わる責任ある仕事で、小さなミスも許されません。常に正確な仕事が求められるといったプレッシャーに見合った高収入と言えるでしょう。

勤務年数や勤務先によっても平均年収は異なります。薬局やドラッグストアでは、専門職として薬剤師手当がつき、店長や管理職になるとさらに高収入に。将来的に自ら開業するといった選択肢もあるので、薬局やドラッグストアは薬剤師の就職先としても人気があります。

製薬会社も年収が高いため就職先として人気ですが、博士号や修士号を求められることも多く、狭き門でしょう。

薬剤師は働く雇用形態もさまざま。特に女性の場合、出産や育児により一度仕事から離れたとしても、国家資格があるため比較的復職しやすい職業であると言われています。

パートや派遣社員として時短勤務した場合も専門性の高い仕事であることから、他の職種よりも高い時給で就業可能。

薬剤師の仕事は景気や時代に左右されることが少なく、安定して稼げる職種です。年収のピークが男女共に50代以降といった傾向もあり、年齢を重ねキャリアを積むほど堅実に収入を上げるチャンスがあります。

そのため、生涯安定して高収入を得たいと考える人におすすめの職種と言えるでしょう。

薬剤師に求められるスキル

薬剤師は人や社会に貢献できる仕事であると同時に、安定して稼げる職種です。薬剤師として働くために、求められるスキルはどのようなものがあるのでしょうか。

豊富な知識

薬剤師は薬を扱う仕事なので、薬学の豊富な知識を持っていることが大前提。人の命や健康に深く関わるため、薬の正しい扱い方や服薬の仕方についてなど専門知識は欠かせません。

また、医療業界は常に進歩しているため、新薬が登場したり新しい発見があったりすることも。

そのため薬剤師は、薬学への強い関心と探究心を持って学び続け、情報収集し続ける必要があるでしょう。

集中力

集中力が求められる薬剤師の仕事。薬の調剤や研究といったミスの許されない繊細な作業が多く、長時間集中して仕事をする必要があります。病院や薬局での調剤については、混雑時には特に、スピードのある正確な作業が求められます。

薬剤師にとって、集中力は必要なスキルと言えるでしょう。

リスク管理能力

薬剤師にはリスクを察知する能力も求められます。医師からの処方箋にミスはないか、患者にアレルギーはないか、副作用は生じないかなど念入りに確認しなければなりません。

高齢者や妊婦、子どもの場合はさらなる注意が必要に。薬剤師は可能な限りリスクを回避するために、常にアンテナを張る必要があるので、リスクを管理する能力が求められるのです。

コミュニケーション力

薬剤師はコミュニケーション能力も必要。患者に対して医療品の説明や服薬の注意事項など、ただ説明するだけでなく、それぞれの患者に合わせてわかるように伝えることが大切です。

一方で、患者が抱えている体調に関する不安や疑問などをさりげなく聞き出すスキルも必要。何気ない会話の中に、リスク回避につながるヒントがあるかもしれません。

また、医師や看護師と連携しなければならないことも多々あります。処方箋の内容を確認したり、ミスを指摘したり、薬に関する提案をするのも薬剤師にしかできない仕事。

関わる人々と良好なコミュニケーションが取れる薬剤師は、医療現場で重宝されるでしょう。

薬剤師に役立つ資格・スキル・経験

次に、薬剤師になるために必要な資格、役立つ資格について解説しましょう。

薬剤師国家資格

薬剤師になるためには国家資格が必要です。国家資格を受験するためには、大学の薬学部で6年間学び、薬剤師養成課程を修了しなければなりません。

試験内容は薬学に関する幅広い知識が求められますが、合格率は70%を超えるなど比較的高いのが特徴。合格できなかった場合は翌年にチャレンジできます。

しかし、新卒で就職先が決まっていた場合、国家資格取得が前提条件のことがあるため注意しましょう。

認定薬剤師

認定薬剤師とは、薬剤師国家資格を取得した上で、特定の専門分野において十分な知識や技術が認められた薬剤師のことです。認定薬剤師認証研修機関が主催する研修に参加、必要な単位を取得した上で申請すると認定薬剤師として登録。

認定薬剤師は専門分野によって種類が細分化されており、研修認定薬剤師、がん薬物療法認定薬剤師、在宅療養支援認定薬剤師など専門分野は多岐に渡ります。登録したら完了ではなく、3年ごとの更新が必要。

また、認定薬剤師の資格を取得することで、最新の薬学について学べたり、手当支給や収入アップしたりといったメリットもあります。

認定後も更新が必要なため、学び続けることが求められますが、認定自体の難易度は高くないため取得する価値はあるでしょう。

専門薬剤師

専門薬剤師とは、認定薬剤師を取得した上で、さらにステップアップしたい人向けの資格。認定薬剤師と同様、専門分野に関する研修に参加して必要な単位を取得する必要があります。

より専門的な知識と技術が求められ、指導者や研究者として活躍することも可能に。専門分野は認定薬剤師と同様、多岐に渡り、医薬品情報専門薬剤師、がん専門薬剤師、認定女性ヘルスケア専門薬剤師などさまざま。

資格取得後も更新が必要であるため、努力しながら実績を積み重ねることが必要です。

薬剤師の仕事の厳しさ

薬剤師は人の命や健康に関わる意義のある仕事である一方、大変なことやつらいこともあるでしょう。ここでは薬剤師の仕事の厳しさについて解説します。

ミスが許されない

薬剤師の仕事はミスが許されません。医師の処方箋に基づいて薬を調剤するのが主な仕事であり、ミリグラム、ミリリットルといった細かな分量の薬を扱います。扱う薬剤の名称も多く、似ているものや分量を間違えたら副作用が出るものもあり、常に緊張感を持って作業しなければなりません。

また、医師の処方箋に誤りがないか、疑問がないか、最後の砦としての緊張感を持って確認する必要もあります。正確な服薬の仕方や注意点などを正しく伝え、患者に理解してもらわなければ、患者の生活や命にまで影響を及ぼす可能性もあるのです。

薬剤師の仕事は少しのミスも許されないプレッシャーのある仕事と言えるでしょう。

学び続けなければならない

薬剤師の仕事には日々学び続けなければならない厳しさがあります。薬剤師の資格は更新の必要がなく、一生使えるものである一方、知識は常にアップデートする必要があります。

医療の現場は日々新しい発見があり、次々に新薬が登場したりと進歩・変化が多いのが特徴です。薬剤師の知識が古いままだと患者の健康に影響が出る可能性も。

薬剤についての最新の動向や情報について、「知らなかった」では済まされない責任があります。薬剤師は第一線で仕事をしながらも、意欲的に薬学を学び続ける必要があるでしょう。

コミュニケーションが難しい

薬剤師はコミュニケーションに関する悩みにも直面することが多いと言えます。薬剤師が主にコミュニケーションをとるのは、常に忙しくしている医師や看護師などの医療関係者、そして調剤を待つ患者です。

限られた時間の中で正確な情報を伝えたり、最適な提案をするのは至難の業。特に患者は老若男女問わず、タイプも病状もさまざまです。

患者がどういったコミュニケーションを求めているか、手短かに話す必要がある場合や丁寧な説明を必要としている場合など、それぞれに見合ったコミュニケーションの仕方を見極める難しさがあるでしょう。

薬剤師に向いている人

安定して働けると人気の薬剤師。どのような資質を持った人が薬剤師に向いているのでしょうか?以下に詳しく解説します。

几帳面な人

薬剤師は几帳面な人が向いている職種です。薬の調剤はミリ単位での計量。「少しくらい間違えても…」というわけにはいかないのです。

薬剤師が誤った分量で調合したり、他の薬と間違えたら症状が改善されないどころか、大変な副作用をもたらす可能性もあり、大問題。薬剤師は、こういったリスクがあることもしっかりと理解した上で責任を持って作業することが求められます。

そのため、細かい作業を得意とする几帳面さは、薬剤師にとって欠かせない資質と言えるでしょう。

化学が好きな人

薬剤について学ぶ際、基本となるのは化学の知識・視点です。薬は化学物質であるため、その成分や効果について深く知るためには化学の知識が欠かせません。

大学で薬学を学ぶ際も化学は必須科目であり、国家試験でも化学について問われます。薬剤師を目指す段階から晴れて薬剤師として活躍する日まで、化学の考え方は全ての前提になるのです。

「もともと化学が好き」「化学をもっと学びたい」と化学が好きな人が薬剤師に向いていると言えるでしょう。

責任感がある人

責任感のある人は薬剤師の仕事に向いています。薬剤師は患者の命や健康に直接関わる、とても責任のある仕事。

医師の処方箋に疑問がある場合、「処方箋通りに調合すればいい」と見過ごさず、薬の専門家として責任持って医師に提言しなければなりません。患者に対しても「医師の処方箋通りに調合した」ではなく、薬の効果・効用、服用についての注意点や服用の仕方まで責任を持って説明する必要があるのです。

医療の最後の砦として責任を持って薬を調剤できる人が薬剤師に向いているでしょう。

薬剤師になるには

薬剤師になるためには薬剤師国家資格が必須です。では、どのようなステップを踏めば薬剤師になれるのか、段階ごとに見ていきましょう。

Step.1 薬系大学に入学(6年制)

薬剤師になるためには、大学の薬学部または薬科大学にて6年間学び、必要な教育課程を修了しなければなりません。一般教養はもちろん、薬学に関する専門的な知識を習得。

医療現場での実習に進むための試験を受け、合格すると実際に薬局や病院にて調剤や医薬品の管理、チーム医療などを経験します。

Step.2 薬剤師国家試験

薬剤師として必要な教育課程を修了し、必要な単位を取得したら薬剤師の国家試験を受験します。

試験科目は、物理・化学・生物・衛生・薬理・薬剤・病態・薬物治療・実務といったものから、法律関連まで。薬剤師国家試験は2月に実施します。

Step.3 薬剤師登録

薬剤師国家試験に晴れて合格すると、厚生労働省が定める薬剤師名簿への登録をします。居住地の最寄りの保健所や都道府県庁に本人が必要書類を提出。

登録完了すると薬剤師としての業務が可能になります。申請から2カ月後に薬剤師免許証の交付です。

Step.4 薬剤師として勤務開始

薬剤師名簿に登録完了し免許証が手元に届いたら、薬剤師として就職できます。国家資格の結果を待たずして就職活動している人もいれば、合格後に就活を開始する人もいるでしょう。

5年次の実習やインターンシップを通して、薬局、病院、ドラッグストア、製薬会社など、自分がどういった分野で働きたいか方向性を考えておくことをおすすめします。

薬剤師のキャリアパス

薬剤師は活躍できる場所も多様であることから、多くのキャリアパスが存在します。

まず、薬剤師の約半数程度が勤務する調剤薬局。初めは処方箋に基づいて調剤するといった経験を積み、他の薬剤師やスタッフをマネジメントする管理薬剤師になるのが一般的。

そのあとは、複数の薬局を管理するエリアマネージャー、人事や教育、店舗開発を行う経営幹部といったキャリアパスもあります。薬剤師の資格を活かすのはもちろん、マネジメントや経営に力を発揮するパターンと言えるでしょう。

病院に勤務する薬剤師も多くいます。病院には医師や看護師など医療従事者も多くいるため、さまざまな情報が得られたり、チーム医療の経験をしたりできるでしょう。

病院薬剤師として基礎を学び経験を積んだ後は、特定の疾患や患者層に特化した専門薬剤師を目指す人もいます。

薬剤部の主任、部長といった管理職を目指すキャリアパスも。マネジメントや経営に力を発揮し、病院経営に参画する薬剤師もいるのです。

薬剤師資格を活かして製薬会社で活躍する薬剤師もいます。新薬の研究・開発に関わったり、医薬品の情報提供や使用を促すMR(医療情報担当者)といった営業職も。その場合は企業での管理職や経営参画を目指したり、研究を極めるといったキャリアパスもあるでしょう。

自由度の高いフリーランスの薬剤師として、複数の勤務先で働いて高収入を得る人や子育て中のためパートや派遣社員としてキャリアをつなぐ人もいるでしょう。薬局のオーナーとして独立するというキャリアパスも。

国家資格を持つ薬剤師はさまざまな働き方で、さまざまな場所で活躍できます。キャリアパスも豊富なため、自分がどういった道へ進みたいか、強みや志向を加味して理想の働き方を描いてみてください。

どのキャリアパスを選択しても、薬剤師は人々の生活や命を支える価値ある職業と言えるでしょう。

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