SES(システムエンジニアリングサービス)業界の仕事の中身を知る!働き方とキャリアの全体像を徹底解説
公開日
2025.12.19

SES(システムエンジニアリングサービス)業界の仕事の中身を知る!働き方とキャリアの全体像を徹底解説


SES業界は、ITエンジニアとしてさまざまなプロジェクトに関わりながら、システム開発や運用を支える役割を担っています。
技術を提供するだけでなく、現場の状況に応じて課題に向き合い、ITを通じて業務やサービスを支えていく仕事です。

一方で、「SESは派遣と同じなのでは」「どんな案件に関われるのか分かりにくい」といった不安を感じる学生が多いのも事実です。
SES業界には、開発やインフラ、運用・保守など幅広い仕事があり、関わるプロジェクトや企業の方針によって、経験できる領域もさまざまです。

この記事では、SES業界の基本的な仕組みから、働く中で身につくスキル、キャリアの広がり、ギャップを減らすために確認しておきたいポイントを紹介します。

SES(システムエンジニアリングサービス)業界とは?

SES業界とは、IT企業(SES企業)が自社で雇用しているエンジニアを、顧客企業やSIer※¹のプロジェクトに参加させ、技術力を提供するビジネスです。
エンジニアはSES企業の社員として働きながら、プロジェクトごとに異なる現場で業務を行います。

契約形態は、一般的に準委任契約※²が多く採用されています。これは、「システムを完成させて納品すること」よりも、「決められた業務を一定期間進めること」に対して対価が発生する契約です。そのため、エンジニアはプロジェクトの一員として、開発や運用などの業務に継続的に関わるケースが多くなります。

IT需要の拡大やエンジニア不足を背景に、企業が必要な期間・必要なスキルの人材を確保する手段としてSESは活用されています。開発だけでなく、保守・運用、テストなど、人手が求められるさまざまな場面で利用されているのが特徴です。

※¹SIer(エスアイヤー)…企業のシステム開発をまとめて請け負い、設計や開発、運用までを管理するIT企業のこと。
※² 準委任契約…成果物を完成させることではなく、「業務を進める時間や役割」に対して報酬が支払われる契約形態。

SES業界のしくみと社会での役割

SES業界は、IT人材が不足しやすい現場と、エンジニアをつなぐ役割を担っています。
ITプロジェクトは、期間や内容が毎回異なるため、企業は「必要なときに、必要なスキルを持つ人材」を柔軟に確保する必要があります。
そのニーズに応える仕組みの一つがSESです。

エンジニア側から見ると、1社に在籍しながら複数のプロジェクトに関わることができ、経験の幅を広げやすい働き方でもあります。一方で、どんな案件に配属されるかは、会社の案件の持ち方や育成方針によって左右される点も理解しておく必要があります。

近年では、DX推進や新規システム開発、既存システムの保守・運用など、幅広いIT需要に対応する手段として、SESを活用する企業が増えています。

SES業界の主な5つの領域

SES業界の仕事は、テストや運用補助だけでなく、開発、インフラ構築、上流設計まで多岐にわたります。ここでは、エンジニアとして働くうえで中心となる5つの主要領域を紹介します。

① 開発(フロントエンド・バックエンド・モバイル)

開発領域では、Webアプリケーション、業務システム、スマートフォンアプリなどの実装を担当します。画面を作るフロントエンド、サーバー側の処理を担うバックエンド、モバイルアプリ開発など、プロジェクトによって求められる技術は異なります。 プログラムを書いて機能を作ったり、先輩の書いたコードを確認したりと、実際に「システムを形にする」作業を担当します。 最初は一部の機能修正や画面づくりなど、限られた範囲から任されるケースが一般的です。開発の実務を通じてプログラミングスキルが身につきやすい領域です。

インフラ領域 では、システムが止まらず、安全に動き続けるように、サーバーやネットワークの設定・管理を行います。 クラウド技術の普及により、インフラエンジニアの需要は高まっており、設定作業だけでなく、自動化やコード化といったスキルも身につけられる環境が増えています。

③ テスト・品質管理(QA)

テスト・品質管理では、システムが正しく動作するかを確認し、不具合を見つける役割を担います。テスト設計、テストケース作成、実行、バグ報告など、品質を保つための重要な工程を担当します。 「テストだけ」というイメージを持たれがちですが、テスト設計やテスト自動化など、専門性の高い業務に発展するケースもあり、品質エンジニアとしてのキャリアを積むこともできます。

運用保守・監視では、稼働中のシステムが安定して動き続けるようサポートします。システムにトラブルが起きた際の一次対応や、日常的なチェックなど、システムの「守り」を担う仕事です。 現場での障害対応やトラブルシューティングを通じて、システム全体の理解が深まりやすく、運用経験を土台に開発や設計にステップアップするケースもあります。

上流工程では「どんなシステムを作るか」を考える段階の仕事に関わります。 具体的には、顧客の要望を聞きながら内容を整理したり、システムの設計書を作ったり、プロジェクトの進み具合を確認する補助を行います。 技術的な知識に加えて、相手の話を整理して伝える力や、関係者と調整する力が求められる領域です。

SES業界で身につく3つのスキル

考えて動く力
「このエラーは何が原因だろう?」「誰に確認すればいい?」といった状況に日常的に向き合う中で、問題の切り分けや、適切なタイミングでの報告・連絡・相談が自然と身につきやすいです。
議事録や手順書、仕様メモなどのドキュメントを作成しながら情報を整理する経験も、現場を渡り歩く中で積み重なっていきます。

●タスク管理力
プロジェクトには必ず納期があり、複数のタスクを同時に進めることも珍しくありません。
「今日やるべきこと」「後回しにできること」を整理しながら、限られた時間の中で作業を進める力が求められます。
タスク管理ツールなどを使いながら優先順位を考えて動く経験を重ねることで、自然とスケジュール感覚や段取り力が身についていきます。

● キャッチアップ力
SESでは、担当するプロジェクトの内容に応じて、使用するツールや業務が変わることがあります。
そのため、「この業務は何のために行っているのか」「この技術はどこで使われているのか」を自分で調べたり、分からないことを周囲に確認しながら仕事を進める場面が多くなります。

SES業界に合っている人の特徴


① 環境の変化を前向きに受け止められる人
SESでは、同じ現場で働き続ける場合もあれば、プロジェクトの切り替わりに伴って、業務内容や使うツールが変わることもあります。
そうした変化を必要以上に不安に感じすぎず、「新しいことを学ぶ機会」として受け止められる人は、経験を積みやすい傾向があります。
一つの仕事を極めるだけでなく、いくつかの現場を通じてスキルの幅を広げたいと考える人には向いているといえます。

② わからないことを素直に聞ける人
ITの現場では、技術やツールが常にアップデートされており、新しい用語や仕組みに触れる機会が多くあります。そのため、「最初から全部わかること」よりも、わからない部分をそのままにせず、周囲に確認しながら理解を深めていけるかどうかが大切になります。
特にSESでは、現場ごとに使うツールや進め方が異なることも多く、新しい環境に慣れる力が求められます。わからない点を自分から質問し、少しずつ吸収していく姿勢がある人は、現場でも信頼されやすく、成長につながりやすいです。

③ チームで協力しながら進めることが好きな人
一人で黙々と作業するイメージを持たれがちですが、実際のプロジェクトは複数のメンバーと連携しながら進めることがほとんどです。
進捗共有、レビュー、問題の相談など、コミュニケーションを大切にしながら、チーム全体で目標を達成することに喜びを感じる人は、活躍しやすいと言えるでしょう。

SES業界|キャリアモデル紹介

SES業界では、研修や現場でのOJTを通じて基礎を身につけた後、配属される案件の中で実務経験を積みながら、少しずつキャリアを広げていくのが一般的です。

入社1年目は、テストや運用補助、開発補助などを通じて、仕事の進め方や現場での立ち回りを学ぶ時期になります。2〜3年目になると、実装範囲が広がったり、担当機能を任されるなど、役割が少しずつ大きくなるケースも見られます。

ただし、昇格や異動のスピードは企業ごとに大きく異なるため、「◯年で必ず上流に行ける」といった固定の形があるわけではありません。説明会やOB/OG訪問で、「キャリアパスの実例」や「育成・評価の仕組み」を必ず確認しましょう。

SES業界が向き合う社会課題

SES業界は、IT人材不足が続く中で、企業のシステム開発や運用を支える役割を担っています。

DX推進や業務のデジタル化が進む一方で、必要なスキルを持つエンジニアを自社だけで確保することが難しい企業も少なくありません。
こうした状況に対し、SESはプロジェクトの内容や期間に応じて、必要なタイミングでエンジニアを現場につなぐ仕組みとして活用されています。

たとえば、業務のデジタル化を進めたいものの、開発経験のある人材が社内にいない企業では、システム開発や改修を担うエンジニアを提供することで、プロジェクトの実行を支えています。
近年では、開発だけでなく、運用や改善まで含めて支援するケースも増えており、SESはITが急速に進む社会を下支えする存在として役割を広げつつあります。

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先回り質問をチェックしよう

「SES=派遣?」「配属先は選べるの?」というイメージを持つ学生も多いですが、実際は企業によって働き方も育成方針も大きく異なります。

そのため、説明会やインターンでは企業の実態と自分の希望にギャップがないかを確かめるために、逆質問を用意しておくことが重要です。

下記では、入社後に「思っていたのと違った…」を防ぐための、先回り質問を紹介します。

Q. SESって、結局どこの会社の指示で働くことになるの?
A.SESは、一般に準委任契約として扱われることが多く、基本的には自社(SES企業)に所属し、その指示を受けながら業務を行う働き方が想定されています。 派遣の場合は派遣先企業から直接指示を受けますが、準委任ではそうならないのが原則です。 ただし、現場によっては発注先から直接指示を受けるような働き方になってしまうケースもあり、これが 偽装請負として問題視されることがあります。 そのため、入社前に契約形態と実際の働き方について、どこまで説明してもらえるかを確認しておくことが大切です。

※先回り質問とは、説明会やインターンで疑問を事前に解消する質問です。

Q.担当する案件や業務内容は、どのように決まりますか?
A.担当する案件や業務内容の決まり方は、企業によって異なります。 本人の希望や適性、キャリア面談の内容を踏まえて検討する企業もあれば、プロジェクトのタイミングや人員状況を優先して決まるケースもあります。 そのため実際にどのような案件が多い会社なのかを理解しておくと安心です。
Q.最初の案件がテスト/運用だったら、開発に行ける?
A.最初の配属がテストや運用補助であっても、その後開発やインフラ、設計に広がるケースは多くあります。ただし、それは企業の育成方針や案件の取り方に大きく左右されます。 育成プランがしっかりしている企業では、段階的にステップアップできる仕組みが整っていることが多いです。

まとめ

SES業界は、IT技術を通じてさまざまなプロジェクトに関わりながら、実務経験を積んでいける働き方の一つです。現場での経験を重ねることで、自分の得意分野や興味のある領域が見えてきやすく、将来のキャリアの選択肢を広げていける点も魅力です。

もし興味を持たれた方は、まずは説明会やOB・OG訪問に参加し、実際に働く人の話を聞いてみてください。

どんな案件に関わっているのか、どのように成長しているのかを知ることで、SES業界で働くイメージがより具体になります。

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