美容師の主な仕事内容
比較的イメージのしやすい美容師の仕事。実際にどのような仕事をしているのか具体的に紹介します。
カウンセリング
美容師が始めにする仕事は、客とのカウンセリング。初めて来店する客でも、指名してくれるリピート顧客でも同様で、希望のヘアスタイルやカラーなど、客の要望を丁寧に聞き出します。同時に客の髪質や髪の状態を確認。
その上で、どのようにカットするか、どのようなカラー剤を使用するか、客と相談しながら決定していくのです。このような会話を通して、客の希望と美容師の施術イメージを合わせていく作業がカウンセリングです。
カット・カラー・パーマなどの施術
目指すヘアスタイルが決まったら、内容に合わせて、カット、パーマ、カラーリング、シャンプー、ブローなどを行います。
カットでは、全体のバランスや髪の毛の生え方、流れを考慮しながら、濡れた状態でも乾いた状態でもまとまるようにカットします。カットしてしまえば戻すことはできないため、短く切る時は特に客との合意が必要。また、次の施術までに髪が伸びてもバランスが崩れにくいように工夫する技術が求められます。
カラーリングはカラー剤を使って髪を染める作業です。どんな色味にしたいか、白髪染めなのか、イメージを変えたいのか、など客の希望を把握した上での施術が必要でしょう。
パーマにはさまざまな種類があり、美容師の技術が問われます。パーマをかけるのは髪の悩みを解決するためか、髪質と合ったパーマを希望しているか、など客の目的やイメージをすり合わせた上での施術が必要です。
他にも、新人美容師が最初にお客様に施術し、繰り返し実践を積むのがシャンプーです。客にとって気持ちの良いシャンプーをするために、洗い方や力加減など練習を重ねる必要があります。
一通りの施術が終わったら、髪をブローすることで完了。その後の予定を確認し、それに合わせたセットやアレンジも行います。客が抱いていたイメージに近づけたか、施術後に確認することも、美容師にとって大切な仕事と言えるでしょう。
ネイル・マツエク・メイクなどの施術
美容室によっては、ヘアスタイルの施術だけでなく、ネイルやマツエク、メイクなどの幅広い美をかなえるサロンも増えてきています。結婚式の際にヘアスタイルと同時にフルメイクを依頼することも。
一カ所でヘアスタイルはもちろん、ネイルやマツエク、メイクなどの施術が受けられるのは、客にとって嬉しいメリットです。
ネイリストやアイリストなどの専門家が常駐するケースもありますが、美容師がこれらのスキルを持っていると携われる業務も増え、市場価値も高まるでしょう。
着付け
成人式や結婚式、卒業式などで着物を着る際、美容室で着付けを行うことがほとんど。着付けのサービスを提供している美容室は、成人式や卒業式シーズンは予約がいっぱいになることもあります。
また、着付けと同時に和装に合わせたヘアスタイルやメイクの技術も必要です。着付けができる美容師には特別手当が出ることもあり、重宝されるでしょう。
美容師の年収
美容師の年収は、日本の労働者の平均年収と比較しても決して高いとは言えません。美容師は国家資格が必要な職種ですが、医師や弁護士、調理師、保育士などの国家資格が必要な他職種と比較しても年収は低い傾向にあります。しかし実態は、美容師の年収には幅があるのです。
では、美容師の給与の仕組みはどのようになっているのでしょうか。
ほとんどの美容室では以下のようなランク制度を取り入れています。
- アシスタント
- ジュニアスタイリスト
- スタイリスト
- トップスタイリスト
美容師免許を取得した後、下積み期間はアシスタントとして客の出迎えや、シャンプー、スタイリストの手伝いをします。目安として期間は3年ほど。お店や実力によって1〜2年でスタイリストになれる人もいれば、3年以上たってシスタントのままの人もいます。アシスタントの給与は低めで、月収15万円前後です。
アシスタントを卒業したばかりのジュニアスタイリストはカットを任されるようになります。美容室によってはジュニアスタイリストのランクがないことも。ジュニアアシスタントの給与は月収20万円前後。まだ指名されることもほとんどないため、指名料で稼ぐことは難しいでしょう。
すべての客の要望に応えられるスキルが身につくと、スタイリストとして認められます。月収20~30万円程度です。指名料や報奨金、役職手当が付くケースもあり、同じスタイリスト同士でも収入に差が出てくるでしょう。
スタイリストの中でも人気と実力が兼ね備わった人だけがトップスタイリストに昇格できます。月収30~50万円、年収は600~800万円程度。客の施術だけでなく、アシスタントやスタイリストを管理・指導する立場になります。
独立してお店を出す人もいるでしょう。複数店舗を運営したり、固定客数を増やしたり、やり方次第でさらに高収入を得ることが可能です。お店の立地や地域によっても年収に違いがあり、都心や有名美容室であれば、給与・待遇も良くなります。
また、フリーランスのスタイリストとして活躍する人も増えてきました。業務委託として美容室で勤務する業務委託型と、自分で場所を借りてサービスを提供する面貸し型があります。業務委託型は契約内容にもよりますが、正社員として働くより短時間で高収入を得られる可能性も。面貸し型であれば、自由に料金設定ができるため、口コミやSNSなどで集客できればその分高収入が得られます。
このように美容師の年収は、美容師のランクや働き方、働くエリアによって変わってくるのです。
美容師に求められるスキル
美容師というとおしゃれでスタイリッシュなイメージが強い職種です。美容師に求められるスキルはどういったものがあるのでしょうか。
技術力
美容師にとって最も必要なスキルは、技術力です。カット、パーマ、カラーリングなど施術内容に合わせた専門知識はもちろん、客の要望に沿った理想のヘアスタイルに近づけるための技術力は必須です。
そして美容師にとって欠かせない技術力は、経験を積むことでしか鍛えられません。技術力を身に付けるために美容師は、日夜練習を重ねる必要があるのです。
たとえ、接客が得意であったり、有名店に勤務していたり、自身が身なりやヘアスタイルに気を配っていても、美容師としての技術力がなければ固定客はつかないでしょう。
美容師にとって技術力は第一に必要なスキルなのです。
カウンセリング力
美容師には、カウンセリング力が求められます。自分の希望のヘアスタイルについて、的確に説明できるお客様ばかりではありません。美容師は、客の理想とするスタイルを会話の中で引き出し、より魅力的に見せるための提案をすることが大切です。
たとえセンスに自信があっても、美容師の好みや得意なスタイルだけを押し付けてはいけません。カウンセリングとは、客の希望やその背景を聞き出し、美容師と共同で完成イメージを作り上げていくことなのです。
コミュニケーション力
美容師は、技術職であり、接客業でもあります。そのため、客一人ひとりに合わせたコミュニケーション力も重要でしょう。
施術中に会話を楽しみたい客もいれば、静かに雑誌を読みたい客もいます。美容師には、客が何を求めているか察知するスキル、そして客との距離感やタイミングに配慮しながらコミュニケーションをとる力が必要なのです。
例えば静かに考え事がしたい客に対して、空気を読めずに話しかけ続けていたら、客にとって心地よい時間にはなりません。たとえ技術力があっても、次はその美容師を指名しないでしょう。
客は理想のヘアスタイルと同時に、リラックスできる時間を求めています。美容師には、それぞれの客に合ったコミュニケーションスタイルで、居心地よい時間を作り出す力が求められるのです。
美容師に役立つ資格・スキル・経験
美容師の仕事に一度は憧れる人も多いでしょう。ここでは、美容師になるために必要な資格、美容師にとって役立つ資格について紹介します。
美容師国家資格
美容師になるためには、国家資格である美容師免許を取得する必要があります。美容師免許の受験資格を取得するためには、厚生労働大臣が指定した理容師・美容師養成施設で以下のいずれかの課程を修了しなければなりません。
- 昼間課程:2年以上
- 夜間課程:2年以上
- 通信課程:3年以上
美容師国家試験は、筆記試験と実技試験の2種類。筆記試験は、以下の8ジャンルから構成されています。
- 関係法令・制度
- 公衆衛生・環境衛生
- 感染症
- 衛生管理技術
- 人体の構造及び機能
- 皮膚科学
- 美容の物理・化学
- 美容理論
実技試験は、カッティング、セッティングの基本的なスキルをチェック。スキルはもちろん、身だしなみや清潔感、用具の取り扱い方が丁寧か、なども見られているため、落ち着いて対処することが大切です。
試験は年に2回開催されており、比較的合格率も高めで、60〜80%を推移しています。
管理美容師資格
管理美容師とは、客が安全で清潔に施術が受けられるように、美容室の器具や設備を衛生的に管理する美容師のこと。
美容師が複数いる美容室を開設する際は、衛生管理の責任者として管理美容師を置くように厚生労働省が定めています。そのため、将来美容室を開業したいと考えている人にとっては必要な資格と言えるでしょう。
管理美容師の資格を取得するには以下の条件を満たす必要があります。
- 美容師の実務経験3年以上
- 公衆衛生、衛生管理についての18時間の講習を修了すること
講習を受けた後は特に試験はなく、レポートを提出することで資格取得できます。
着付け技能士
着付け技能士とは、着付け技能検定に合格することで取得できる国家資格です。着付け技能士の資格があれば、成人式、結婚式、入学式、卒業式、七五三などの着物を着る場面で活躍できます。
美容師として着付けを行うために、着付け技能士の資格は必須ではありません。しかし、資格を持っていれば、美容室での仕事の幅が広がるのはもちろん、着付け師として出張サービス、開業、フリーランスとして活躍することも可能です。
そのため着付け技能士は、美容師のキャリアアップにも役立つ資格と言えるでしょう。
着付け技能士試験は、学科と実技に分かれており、着付けの知識と技能が問われます。美容師免許を持っている人は、2級着付け技能士に必要な実務経験が免除。また1級着付け技能士を受験するためには2年以上の実務経験が必要になります。
美容師の仕事の厳しさ
華やかなイメージのある美容師。一方で、大変で辞めてしまった、つらいことが多い、などの声もあります。では、美容師の仕事には、どのような大変さがあるのでしょうか。
休みが取りづらく長時間労働
美容師の仕事は、休みが取りづらく、労働時間が長いという大変さがあります。
多くの美容室は、定休日が週に1日。美容師の休みは月にして4〜6日程度が平均です。営業日に急な体調不良や用事などで休みたい場合も、指名が入っていれば容易に代わってもらうこともできず、休みは取りづらいでしょうが
美容室は一日の営業時間が長時間に及びます。多くの指名が入ることで、朝から晩まで客の対応に追われ、休憩も取れないまま、一日中立ちっぱなしということもあるのです。
さらには営業時間終了後に練習を行うこともあり、拘束時間が長く、体力的にもきついと感じることも多いでしょう。
給与が低い
美容師は、労働量に対して給与が低い傾向にあります。国家資格を取得した後も、日々練習を重ね、平均して3年ほどはアシスタントとして技術を磨かなければなりません。
その間は低い給与で生活しなければならず、それでも労働時間は長く休みも少ないのです。そのため、労働に見合った給与が支払われていないと感じるでしょう。
スタイリストになってからも、高い給与が保証されるわけではなく、高収入を稼ぐには指名をたくさんもらえるよう努力するか、後輩を指導・育成するような管理職を目指します。
そのため美容師は、一人前のスタイリストになって固定客がつくまでは、生活も楽ではなく、大変な仕事と言えるでしょう。
コミュニケーションが難しい
美容師は常に人とコミュニケーションをとる必要があるため、精神的なストレスもたまりやすい仕事。信頼関係のある固定客の対応だけでなく、初めてのお客様や対応が難しい客もいるでしょう。
うまくコミュニケーションがとれなかったり、難しい注文をされたり、クレームをもらうことも。美容師はどんなに疲れていても、どんな客にも平等に接することが求められるのです。
また、美容室の他のスタッフとは常に協力して仕事をしなければなりません。上下関係も厳しく、時にライバルにもなり得るため、スタッフ間のコミュニケーションが難しいこともあるでしょう。
美容師に向いている人
美容師になるのに「器用かどうか」は関係ないと言われています。では実際に、どんな人が美容師に向いているのでしょうか。以下に詳しく解説します。
美容に関心の高い人
美容師に向いているのは、美容やファッションに興味関心の高い人。美容師は常に、客をより魅力的にするためにはどうしたら良いか、アンテナを張っておくことが重要です。
客にヘアスタイルの提案をしたり、美容についてのアドバイスをしたり、自分自身も身なりやヘアスタイルに気を配っていなければなりません。その時々のトレンドにも敏感である必要もあるでしょう。
そのため美容師は、美容やヘアスタイル、ファッションに興味があって、それを楽しめる人が向いていると言えるでしょう。
粘り強い人
美容師は、コツコツと粘り強く努力できる人が向いています。苦労して美容師免許を取得した直後から、アシスタントとして努力する下積み時代。スタイリストから指導を受けながら努力して、ひたすら客の出迎えやシャンプーをします。
閉店後には片付けや掃除、練習をする必要もあるため、さらに長時間労働となり、立ちっぱなしで体力的にもきついでしょう。それでも将来の目標をしっかり持って、努力を重ねられる粘り強い人が、美容師に向いていると言えるのです。
人と関わるのが好きな人
美容師には、人と関わるのが好きな人が向いているでしょう。美容師の仕事は必ず客を相手にします。男女問わず大人から子どもまで、さまざまなタイプの客を相手にするのです。
ヘアスタイルに関するカウンセリングや日常会話はもちろん、客の髪や顔に直接触れて施術します。人と関わるのが好きでないととても務まらない仕事なのです。そして美容師の姿勢や思いは必ず客に伝わるもの。
美容師は、人と関わるのが好きで、人のために考え提案できる人に向いている職業と言えます。
美容師になるには
美容師になりたい人は、具体的にどのようなステップを踏めば良いのでしょうか。以下に詳しく解説します。
美容師養成施設を卒業する
美容師になるためには、美容師免許が必須です。資格をとるためにはまず、厚生労働省指定の美容師養成施設である短大または専門学校にて、昼間課程、夜間課程、通信課程のいずれかのカリキュラムを修了する必要があります。
昼間課程は2年間で、集中して国家試験対策に力を入れて学びたい人向け。夜間課程は、2年から2年半で修了でき、日中に仕事をしながら資格取得を目指せるでしょう。通信課程は学費が安く、年に数回しか学校に行かない代わりに卒業までに3年ほどかかります。
いずれかの課程で、美容師にとって必要なカリキュラムを修了して始めて、美容師国家試験が受験できるのです。
美容師国家試験に合格する
美容師免許は厚生労働大臣が発行する国家資格であり、国家試験に合格すれば美容師免許がもらえます。
筆記試験と実技試験の両方に合格する必要があり、試験は年2回実施。筆記試験のみ合格した場合は、次の試験のみ筆記試験は免除。実技試験も同様で、実技試験のみ合格した場合は、次の試験のみ実技試験は免除されます。
美容師免許を申請する
美容師国家試験に合格したら、必要書類をそろえて免許申請をし、美容師名簿に登録をしたら美容師になれます。美容師免許は、一度取得したら、更新の必要はなく生涯有効な資格。
そのため、美容師としてすぐに働く予定がなくても、試験に合格したらまずは申請しておくことをおすすめします。
美容師のキャリアパス
美容師の仕事には、どのようなキャリアパスがあるのでしょうか。
美容師免許を取得後はアシスタントとしてスタイリストの補助からスタート。そしてようやくカットを任されるようになり、全ての施術ができるようになって初めてスタイリストになれます。
そのあとは、トップスタイリストを目指したり、他のスタッフを指導・育成したり、店長やマネージャーなどの管理職を目指す人もいるでしょう。
もちろん現場が好きで、ずっと客の施術をメインで続ける人もいますし、さらに良い環境・良い待遇を求めて転職する人もいます。独立して自分のお店を開業したり、最近ではフリーランスの美容師として活躍する人も増えてきました。
他にも美容師の資格を活かせる職種には、メイクアップアーティスト、アイリスト、ヘアメイクアーティスト、ビューティーカウンセラー、着付け師、美容部員、福祉美容師などがあります。美容師免許は、持っていると活かせる仕事がたくさんあるのです。
このように美容師は、さまざまな選択肢のある職業と言えます。下積み期間が長かったり、長時間労働や休みが少ないなど、厳しい面もあるでしょう。
しかし、綺麗でありたい、もっと魅力的になりたい、と願う人は多く、美容師は多くの人にとって生きる力を生み出せる職業です。自分がどんな形で人を幸せな気持ちにしたいか、と改めて考えることで、美容師のキャリアもさらに開けてくることでしょう。