グラフィックデザイナーの主な仕事内容
「デザインをする」といっても、グラフィックデザイナーは具体的にはどのような流れで仕事をしているのでしょうか。
ヒアリング・打ち合わせ
グラフィックデザイナーの仕事は、クライアントの要望をヒアリングすることからスタート。商品の説明やターゲット、コンセプト、テーマなどをヒアリングし、どのようなデザインにするか打ち合わせをしてイメージを共有します。
デザインの要望が明確でないクライアントの場合は、デザインの方向性や手法などを、グラフィックデザイナーから提案することもあるでしょう。
打ち合わせの段階で、デザインの方向性や完成イメージの認識を合わせておく必要があります。それが不十分だと、のちに大幅な修正が入る可能性があるのです。もしくは完成後に商品の魅力が伝わらない、目的が伝わりづらいなどのトラブルが発生することも。そのため、あらかじめ詳細まで丁寧に打ち合わせをし、認識を合わせておくことが重要です。
合わせて納品までのスケジュールや、予算についても、明確にしておく必要があります。
デザイン制作
デザインの方向性が決まったら、ロゴや写真、イラストなどの素材を使って、デザイン制作を開始。まずはラフ案を作ることからスタートし、レイアウトを決めていきます。
ラフ案の段階でクライアントに確認をとることもあるでしょう。そうすることで、完成近くなってからの修正が減り、クライアントとより明確なイメージが共有できるのです。
企業に属している場合、デザインの制作は、プロデューサーやディレクター、ライター、イラストレーター、カメラマンなどとチームを組んで作品を作り上げていきます。フリーランスのグラフィックデザイナーであれば、打ち合わせから、ラフ案、デザイン制作全てまで一人で行うことになるでしょう。
ラフ案がかたまったら、写真やイラストなどの素材に対して、PhotoshopやIllustrator、InDesignなどのソフトを使用してさまざまな加工を行い、ロゴやキャッチコピーを配置し、デザインを仕上げます。
大切なのは、あらかじめクライアントとすり合わせたイメージ・コンセプトに沿って、要望や用途を考慮して、デザインを決めることです。
デザイン修正
デザインが完成したらクライアントに確認。修正指示があれば、クライアントの指摘をもとにデザインを修正します。修正を繰り返し行うことで、クライアントの持つ完成イメージに近づけていくのです。
グラフィックデザイナーの仕事には、必ず守るべき納期があります。修正が多過ぎると納期に遅れる可能性があるため、気を付ける必要があるでしょう。
最初の打ち合わせ時に、クライアントと完成イメージが詳細まで共有できていれば、少ない修正で完成となることも。あらかじめデザインの詳細まで打ち合わせをしておくことが肝なのです。
納品
クライアントとデザインの合意ができたら、次は納品作業です。
作成したデータをそのままクライアントへ納品するか、または印刷会社へデータ入稿し、ポスター・広告・チラシなどを完成品として納品します。
完成品を納品する場合は、色校正を行い、色見を確認した上で本印刷に入り、完成したらクライアントに制作物を納品しましょう。
グラフィックデザイナーの年収
グラフィックデザイナーの年収は、働き方や働く場所によって異なります。
まず企業に勤めるグラフィックデザイナーの場合は、企業規模が大きいほど年収が高くなる傾向に。中小企業であれば年収400万円前後と言われていますが、大手広告代理店や大企業のグラフィックデザイナーになると、年収がグッと上がり、年収1,000万円を超える人もいます。
グラフィックデザイナーは、年齢とともに年収が上がるのではなく、経験や実績を積むことで収入が上がる職種です。そのため、若くても実力があれば稼げる世界と言えるでしょう。ディレクターやプロデューサーにキャリアアップしたり、責任者・管理職に昇進したりと、ポジションが上がることで収入も目に見えて上がります。
また、Webデザインやコピーライティング、ロゴやキャラクターの作成など、グラフィックデザイン以外にも幅広いスキルがあれば、さらに年収アップも狙えるのです。
次にフリーランスのグラフィックデザイナーの場合、プラスアルファのスキルがあるかどうかが収入を左右します。フリーランスであれば営業から打ち合わせ、制作、納品まで一人で行う必要がありますが、イラストはイラストレーターに、写真はフォトグラファーに、ネットワークを駆使してそれぞれの専門家に依頼することも可能です。
しかし専門家に仕事を分担することで、収入も減ることになるでしょう。そのため、素材がそろった状態からデザインするのではなく、コピーライティングやUXデザインもできる、イラストも描けるなど、一連の流れが一人でできれば収入は大幅に上がります。
フリーランスであれば、スケジュール管理も自分で行うため、複数の案件を同時進行したり、ハイレベルな高収入案件に挑戦したり、自分次第でいくらでも稼げるのです。
昨今では副業としてグラフィックデザイナーの仕事をする人も増えています。クラウドソーシングを利用して、企業に勤めながら空いた時間でグラフィックデザインの副業を単発で引き受けることも可能です。
このようにグラフィックデザイナーの年収は、働き方や働く場所によって異なり、自分次第で収入アップを実現できる職種と言えます。
グラフィックデザイナーに求められるスキル
クリエイティブ職の中でも人気のグラフィックデザイナー。どのようなスキルが求められるでしょうか。
デザインスキル
グラフィックデザイナーは、第一に求められるのがデザインスキル。ポスターやパッケージ、チラシなどを制作する上で、ターゲット層が惹きつけられるデザイン、皆が親しめるデザインを創り上げる能力が必要になります。
具体的にはレイアウト、フォント、配色などを考慮しながらクライアントの要望を満たすような制作をすること。もともと持っている美的センスも重要ですが、日頃からさまざまなデザインに意識して触れたり、良いデザインを見たりして感覚を養い、トレンドを把握しておく必要もあるでしょう。
一度デザインが評価されたとしても、同じ手法だけをずっと使い続けるわけにはいきません。どんな優秀なグラフィックデザイナーであっても、ワンパターンになれば求められなくなります。
そのため、グラフィックデザイナーは常に学び続け、スキルアップし続ける必要があるのです。
デザインソフトを扱うスキル
グラフィックデザイナーは、デザインソフトを使いこなすスキルが必要になります。主に使用するソフトは、グローバルスタンダードであるアドビ社のデザインソフトです。これらのソフトを使いこなすことで、デザインに幅が出て、作業時間が短縮できることもあります。
- Illustrator
- Photoshop
- InDesign
ただ基本的な操作ができるだけでなく、コツが分かっていて、スピーディに使いこなすことが求められるでしょう。
調整力
グラフィックデザイナーは、黙々とデザインに没頭するアーティスティックなイメージが強いですが、さまざまな役割の人との調整が必要な仕事です。クライアントとのコンセプトやスケジュールの調整はもちろん、ディレクターやコピーライター、イラストレーターなど関係者との調整作業も発生しますし、納期を守るための自身のスケジュール調整・管理も重要でしょう。
フリーランスのグラフィックデザイナーであれば、営業活動から打ち合わせ、制作、修正、入稿、納品まで一連の流れを責任持って進めなければなりません。クライアントの要望に沿ったデザインになるよう、予算や納期の調整も自分で行います。
グラフィックデザイナーは、クライアントはもちろん、関わる全てのスタッフと円滑なコミュニケーションをとり、進行管理や納期などさまざまな調整が必要な職種なのです。
グラフィックデザイナーに役立つ資格・スキル・経験
グラフィックデザイナーにとって必須の資格や免許はありません。しかし資格取得のために学ぶことで、実業務に役立つこともあるでしょう。以下に、グラフィックデザイナーにとって役立つ資格を紹介します。
Photoshopクリエイター能力認定試験
Photoshopクリエイター能力認定試験は、グラフィックツール「Photoshop」の活用能力を測定する資格検定試験です。
Photoshopとは、写真や画像の加工、色の調整、合成などを行うグラフィックデザインには欠かせない画像編集ソフト。
スタンダードとエキスパートの2種類でスキルを測定します。スタンダードは初心者向けで、指示通りの正確な基本操作ができるレベル、エキスパートは経験者向けで、クライアントの要望に合わせてデザイン性の高い制作ができるレベル。
受験資格はなく、年齢・経験問わず誰でも受験できます。
Illustratorクリエイター能力認定試験
Illustratorクリエイター能力認定試験は、グラフィックツール「Illustrator」の活用能力を測定する資格検定試験です。
Illustratorとは、図形やイラストを書いたり、文字の装飾やデザインができるグラフィックデザインには欠かせないイラスト作成ソフト。試験内容は、Illustratorの基本的な操作方法を問う知識試験と、指示に従い課題に取り組む実技試験の2つに分かれています。
スタンダードはオペレーターやアシスタントレベル、エキスパートはデザイナーやクリエイターとしての業務ができるレベル。受験資格はなく、年齢・経験問わず誰でも受験できます。
DTPエキスパート認証試験
エキスパート認証試験とは、メディアビジネスにおける必須知識とその活用力を問う試験。印刷物に関する知識を深めたい人向けの資格です。「DTP」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」5つのカテゴリーを設定しており、総合的な知識と技術力が問われます。
学科試験に合格するとDTPエキスパート、学科試験と実技試験の両方に合格するとDTPエキスパート・マイスターと認定。DTPエキスパート認証試験は、2年間の認証期間が設けられており、継続のためには更新試験を受けて条件を満たす必要があります。DTPに関心があれば経歴問わず受験可能です。
グラフィックデザイナーの仕事の厳しさ
一度は憧れる人も多いグラフィックデザイナー。華やかでクリエイティブなイメージがありますが、実際の仕事にはどんな厳しさ・大変さがあるのでしょうか。
修正の繰り返し
デザインの仕事現場では、何度も修正を重ねる大変さがあります。グラフィックデザイナーの仕事は、あくまでクライアントの意向に沿ったデザインを産み出すこと。自分のセンスで良いと感じても、クライアントの意向に沿っていなければ何度も修正が入ったり、一から作り直すこともあります。
企画の段階から何度もやり直しになることも多く、不本意な修正指示が入ることもあるでしょう。制作途中でダメ出しされることも日常茶飯事。グラフィックデザイナーは、どんなに努力し時間をかけても、クライアント次第で修正作業を繰り返す大変さがあるのです。
独創性の難しさ
グラフィックデザイナーは、常にオリジナリティ溢れる制作を期待されます。
しかし、常に誰も見たことのない斬新なデザインを産み出すのはとても大変なこと。何もないところからアイデアを出して形にするのはグラフィックデザイナーにとってのやりがいでもあり、面白さでもあるでしょう。
しかしアイデアが浮かばずに苦労することや、以前に創ったデザインにどうしても似てしまうこと、スランプに陥ることもあります。グラフィックデザイナーの仕事は、試行錯誤しながら独創性あるデザインを創り上げる難しさがあるでしょう。
納期の厳しさ
グラフィックデザイナーの仕事には必ず納期があります。その先にはプロモーションや商品の発売など、クライアントの仕事の事情もあるため、必ず期日を守らなければなりません。中にはもともと納期の短い仕事もあるでしょう。
場合によっては、ラフ案提出の期日、上司への提出期日など、細かい期日に追われることもあります。期日を守りながらも、クライアントの要望通りの作品を産み出さなければならないため、納期前は残業したり徹夜したりすることもしばしば。
グラフィックデザイナーの仕事は、時間をかけてデザインしたくても、納得のいくデザインが浮かばなくても、必ず納期までに仕上げなければならないつらさがあるのです。
グラフィックデザイナーに向いている人
資格がなくても目指せる人気職種、グラフィックデザイナー。では、どんな人に向いている仕事なのでしょうか。
柔軟な人
グラフィックデザイナーには、柔軟な人が向いています。グラフィックデザイナーの仕事は、クライアントはもちろん、ディレクターやイラストレーター、コピーライターなどさまざまな役割の人と関わり合い、コミュニケーションをとりながら仕事を進めなければなりません。
自分の良いと思っていたデザインに対して修正指示や指摘をされても、柔軟に受け入れる必要があるのです。自分の感覚・センスを信じることも大切ですが、他人の意見を柔軟に受け入れることで、より良いデザインが生み出されたり、新しく気付くこともあります。
グラフィックデザイナーは素直に周りの意見や指摘を受け入れ、柔軟に対応できる人が向いているでしょう。
好奇心旺盛な人
グラフィックデザイナーの仕事には、好奇心旺盛な人が向いています。常に新しい発想や表現を求められるため、トレンドや流行、情報に対して好奇心が旺盛で、アンテナを張り巡らせることが大切なのです。
デザインのみならず、あらゆることに興味があって、さまざまな情報をキャッチすることで、感性も磨かれ、発想も豊かになるでしょう。そのためグラフィックデザイナーは、好奇心旺盛で感性豊かな人が長く活躍できる仕事と言えるでしょう。
粘り強い人
グラフィックデザイナーは、コツコツと地道で繊細な作業の多い仕事。その上、工程ごとに何度も修正が入ることや、一からやり直すことも多いため、粘り強く物事をやり遂げられる人が向いていると言えます。
グラフィックデザインとは、ゼロから作品を創り出す仕事であり、正解のない仕事。自分の意見やアイデアが通らないことに対しても、根気強く最後まで関係者と話し合い、粘り強くデザインに取り組める人が向いています。
グラフィックデザイナーになるには
グラフィックデザイナーは未経験から目指せる職種です。では、具体的にどうすればグラフィックデザイナーになれるのでしょうか。
デザイン系の大学・専門学校に通う
グラフィックデザイナーになるには、デザイン系の大学・専門学校で学んで、デザインの基礎を身につけてから就職するのが一般的。働きながらグラフィックデザイナーへの転身を考える場合も、短期間で技術が学べるスクールに通うのがおすすめです。
学歴は必須条件ではありませんが、大学や専門学校では、デザインの基礎やソフトの使い方を一から学べます。分からないことをタイムリーに聞ける環境もあり、ネットワークが作れるのも嬉しいポイント。
また、グラフィックデザイナーを採用したい企業とのコネがあるため、就職・転職について相談できるのも大きなメリットでしょう。
独学で勉強する
オンライン講座や書籍、動画サイトを使って自宅で学び、基礎知識を身に付けるのも一つの方法です。まずはIllustratorやPhotoshopの使い方を習得するところからスタート。一つの指標としてデザイン系の資格取得を目指すのも良いでしょう。
独学で学んでからは、やはり実践を積むことが重要になります。未経験者でも応募可能なデザイン系のアシスタントや求人を探し、現場で経験を積んでから正社員を目指すことも可能です。
働きながら現場で学ぶ
未経験からでも応募できる求人を探して、働きながらスキルを身につけるのも、グラフィックデザイナーになる一つの方法でしょう。現場で実際の業務経験が積めるので、短期間でスキルアップするには一番の近道と言えます。
しかし未経験OKの求人は少ないため、資格を取得して最低限のソフトが使えることをアピールしたり、ポートフォリオを作成したり、クラウドソーシングを利用して少しずつ実績を積むなどの工夫が必要です。
グラフィックデザイナーのキャリアパス
グラフィックデザイナーとして働いていったその先には、どのようなキャリアパスがあるのでしょうか。
まず、グラフィックデザイナーとして企業に属している場合は、アートディレクターやチーフデザイナーなどへのキャリアアップを目指すことが挙げられます。複数のデザイナーをマネジメントする、グラフィックデザイナーの上位職です。
各デザイナーに対するディレクションやデザインのチェック・管理、アドバイスや指導を行います。現場でのデザイン業務より、管理職としての仕事がメインとなるでしょう。
次に、スキルの幅を広げてキャリアチェンジすること。例えばWebデザイナーやUI/UXデザイナーのような他領域への挑戦が挙げられます。インターネットの普及によって、紙媒体からWeb媒体への移行が進んでおり、Web関連のデザイナー職へのニーズは高まっています。幅広くさまざまな業界で対応できるデザイナーを目指す人には、おすすめできるキャリアパスと言えるでしょう。
フリーランスとして独立するキャリアパスも存在します。グラフィックデザイナーとして企業で経験・実績を積んだ後、フリーランス向けエージェントやクラウドソーシング、自らのコネを利用して独立するのです。
フリーランスであれば、受け持つ案件もスケジュールも自分で決められるため、上手くいけば収入アップにもつながるでしょう。Web関連や他領域への挑戦も自由にできます。
一方で、フリーランスであれば営業活動や価格交渉も自分で行う必要があり、コピーライティングやイラスト・写真などの素材の準備・発注もしなければなりません。それをおもしろいと感じられる人にとっては、フリーランスはやりがいのあるキャリアパスと言えます。
このようにグラフィックデザイナーは、時代のニーズをキャッチしながら、自分次第で仕事の幅や可能性を広げていける職種と言えるでしょう。